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【マッチレポート】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第16節
マニフレックス presents マッチデー
5月8日(日)、晴れ渡ったゴールデンウィーク最後の日曜日。ヤマハスタジアムには、今季のブルーレヴズ主催試合最多となる6,326人の観客が集結した。
前節、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪とのビジターゲームは、相手側に新型コロナウイルス感染症陽性者が出たことで試合が中止された。ひとつでも多くの試合をレヴニスタの皆さんに見ていただき、ひとつでも多くの勝利を届けたいブルーレヴズだったが、今季初の不戦勝。これにより勝ち点5が加えられ、望まない形ではあったが入替戦回避が確定。2週間ぶりの試合は、今シーズンのラストマッチになることが決まった。
今季最終戦、ヤマハスタジアムに迎えた相手は、前節終了時点で4位の東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)。前日に、前節5位だったトヨタヴェルブリッツの最終戦がコロナにより不戦敗となり、プレーオフ進出が決まっていた。ブルーレヴズも8位がほぼ確定した中での対戦となったが、この80分間は互いに遠慮なし、自分たちのプライドをかけての戦いとなった。
ラストマッチに臨む選手たちを迎えたのは、ヤマハ発動機ジュビロ時代からチーム応援のシンボルとなっていた大漁旗だ。選手たちが所属するヤマハ発動機の職場の仲間の皆様が作ってくださった名前入りの応援旗が花道を作り、風を受けてはためきながら、ピッチに飛び出す選手たちを迎えた。大戸 裕矢キャプテンを先頭に、ブルーのジャージに身を包んだ23人の選手たちがアーチをくぐって飛び出す。見ている側も脈拍が上がる。
ブルーの背番号15、FB 奥村 翔 選手が慎重にバウンドさせた白いボールが青空に舞い上がった。
キックオフ!
先手を取ったのはブルーレヴズだった。
キックオフでBL東京陣に攻め込むと、ディフェンスの圧力とワークレートの高さで敵陣ステイに成功。ラインアウトでは2mペアを擁するBL東京に187㎝のLO 大戸 キャプテン、186㎝のFL 舟橋 諒将 選手、そして待望の初先発となったチーム最長身198㎝のLO マリー・ダグラス 選手がプレッシャーをかけ、鋭い読みでジャンプし、たびたびスチールに成功。相手の自陣侵入を阻む。
そして迎えた12分。相手陣22m線のラインアウトで圧力をかけてノットストレートを誘い、そこから組まれた右中間のスクラムからSH 矢富 勇毅 選手が右へアタック。WTB キーガン・ファリア 選手と鮮やかなシザースプレーを決めてゴールラインに迫ると、そこからLO ダグラス 選手、HO 日野 剛志 選手、LO 大戸 キャプテン、NO8 クワッガ・スミス 選手が次々とゴールラインめがけて前進。そして5次攻撃、SH 矢富 選手からパスを受けたのが、SO サム・グリーン 選手だ。外へ走ると見せかけては急ブレーキをかけ、内へ切れ込むキレキレのステップで次々と相手ディフェンダーを転がし、鮮やかにインゴールへ走り込む。見事なトライ!FB 奥村 選手のコンバージョンも決まり、ブルーレヴズが7点を先行する。
最高の滑り出しをみせたが、BL東京も23分、すかさずトライを返し同点に追いつくと、さらにブルーレヴズ陣に侵入。しかしブルーレヴズは自信を深めているディフェンスで立ち向かう。32分、自陣ゴール前わずか5mのラインアウトから、相手が持ち込んだボールにNO8 スミス 選手が絡んでノットリリースザボールのPKを獲得。そこから左のラインアウトでボールを再確保すると、SO グリーン 選手が柔らかいタッチで相手防御の背後にショートパント。このキックコントロールと、追うスミス選手の呼吸は芸術的だった。スミス選手は前に出ながらジャンプして見事にキャッチし、着地と同時に猛加速。衝撃の50m独走トライを決めた。FB 奥村 選手のコンバージョンも決まり、14-7とブルーレヴズがリードする。
しかし、BL東京も負けてはいない。39分、ブルーレヴズ陣深くに攻め込んで得たPKから速攻に出てトライ。ゴールキックは外れ、14-12のブルーレヴズリードでハーフタイムを迎える。
サイドの入れ替わった後半、先に点を取ったのはBL東京だった。試合再開からわずか2分後、自陣深くに攻め込まれたブルーレヴズは、ゴール前のスクラムからトライを許してしまう。14-19とBL東京にリードを許した。
だが、ヤマハ発動機ジュビロ時代からチームの心臓だったスクラムからトライを取られたことは、ブルーレヴズFW 8人のハートに火をつけた。次のキックオフから相手陣に攻め込み、SH 矢富 選手がインターセプトしかけたボールを落としてノックオンとなったスクラムを、河田 和大 選手、伊藤 平一郎 選手の両PRを先頭にFW 8人が猛プッシュ、相手はたまらずコラプシング(スクラムを崩す反則)を犯した。ブルーレヴズはこのPKでショットを選択し、FB 奥村 選手がPGを成功。17-19の2点差に迫った。ヤマハスタジアムのスタンドが揺れる。
そして56分、ハーフウェーで組まれた相手ボールのスクラム。交替で入ったばかりの相手SHに矢富 選手がベテランらしい老獪さでプレッシャーをかけると、FWの8人もそれにあわせた猛プッシュで相手ボールをターンオーバー!そこからのアタックで、BL東京にシンビンでの退場。数的優位を得たブルーレヴズは、PKから右ゴール前のラインアウトに持ち込み、連続攻撃からBKの大黒柱、CTB ヴィリアミ・タヒトゥア 選手がゴールポスト真下に飛び込んだ。逆転のトライ!FB 奥村 選手のコンバージョンも決まり、ブルーレヴズが24-19とリードする。
堀川監督はここで強気にカードを切る。ハードワークを重ねてきたLO ダグラス 選手に代えて桑野 詠真 選手、FL 庄司 拓馬 選手に代えてマルジーン・イラウア 選手、そしてWTB ファリア 選手に代えてマロ・ツイタマ 選手を一斉投入。対するBL東京も、リザーブのリーチ マイケル 選手がピッチに入る。互いに疲れの出る試合のラストクォーター。両チームはベンチから元気なインパクトプレーヤーを送り出して勝負をかける。63分、堀川監督がさらに動いた。大活躍のSH 矢富 選手に代え、出場停止処分の明けた田上 稔 選手をピッチに送り込む。
68分、自陣10m線左のラインアウト、相手が激しくプレッシャーをかける中、HO 日野 選手の正確なスローにあわせたLO 桑野 選手が着実にキャッチ。CTB タヒトゥア選手の突進でアドバンテージを得ると、SO グリーン選手は相手ディフェンスの背後にキックを蹴る。相手FWが戻りながら捕球したところへ、CTB 小林 広人 選手、FL イラウア 選手、LO 大戸 キャプテンが激しく襲いかかってターンオーバー。相手ディフェンスが乱れたところですかさずボールはBKに送られ、入ったばかりのWTB ツイタマ 選手へ。猛加速で前進したツイタマ 選手は相手タックルを受けながら、外をサポートしたFL 舟橋 選手に鮮やかなオフロードパス!ここまではタックル、ブレイクダウンのハードワークに徹していた舟橋 選手だが、実はランニングスキルも高い。カバーに戻ってきた相手タックラー2人を一手に引き受け、ここしかないタイミングでオフロードパス。ここに猛然と走り込んだのが、ピッチに入ったばかりの背番号21、SH 田上 選手だった。
田上選手は相手に足を弾かれ、体勢を崩しながらも粘って体を起こし、足を動かし、ゴールポスト左へダイビングトライ。
ヤマハスタジアムのスタンドが拍手と足踏みで揺れる。田上 選手はボールを高々と放り投げ、ゴール裏スタンドのレヴニスタたちに向かって拳を突き上げる。この連続トライでブルーレヴズは29-19とリードを広げる。10点差をつけて残りは10分。勝利は目前だ。
だがBL東京も必死の反撃に出る。72分、ブルーレヴズ陣ゴール前に攻め込んでラインアウトからモールを組み、インゴールにボールを押さえるが、ラインアウトでオブストラクションがあったとしてノートライ。76分にもBL東京がゴール前に攻め込むが、ラインアウトでブルーレヴズは激しくプレッシャーをかけ、LO 大戸 キャプテンが相手ボールをスチール。77分には大外でボールを持った相手WTBにWTB 矢富 洋則 選手が猛タックルで突き刺さると、すかさずSO グリーン 選手、FL イラウア 選手もかけつけ、トリプルタックルで相手WTB を自陣22mのタッチラインに押し出した。
互いに極限の疲労の中での戦い。BL東京も執念をみせラインアウトでボールを奪うと、79分にゴール前のPKからトライとゴールで3点差に迫った。
残り時間はもうない。FB 奥村 選手がキックオフを蹴ると同時にタイムアップのホーンが響く。プレーが切れればブルーレヴズの勝利が決まる。スタジアムを埋めたレヴニスタから手拍子が湧き上がる。その中を、BL東京がボールをつないで攻め続ける。青いジャージはボールを奪おうと必死にタックルに突き刺さる。極限の攻防が続く中で、NO8 スミス 選手に反則の繰り返しによるイエローカードが出てしまう。
時計は83分を過ぎていた。BL東京最後のアタック。ブルーレヴズは14人で必死のタックルを繰り返す。赤ジャージーも激しくかつ正確にボールをつなぐ。時間を忘れそうな攻防は実に4分間、30フェイズまで続いたが、最後は87分、BL東京にトライを許し最終スコアは29-33。ブルーレヴズは敗れた。
86分までリードを守り続けながら、最後の最後に逆転負け。ヤマハスタジアムに集まったレヴニスタの皆さんに、勝利を届けることはできなかった。だけど、ブルーレヴズの選手たちは誰も下を向かなかった。笑顔で勝者を称え、勝者も笑顔でブルーレヴズの選手たちを称えた。2019年のワールドカップで、日本代表や世界の強豪国の選手たちが見せた、極限の攻防と友情、ノーサイド精神の両立がそこにはあった。勝敗は望んだものではなかったが、ホーンが鳴った後も続く極限の戦いの中で、静岡ブルーレヴズとはどんなチームなのかを、改めてレヴニスタのみなさんに感じ取ってもらうことはできたと思う。
もちろん、ここに満足してはいられない。それは選手もスタッフも誰もが知っている。試合後のセレモニーで、プロフェッショナルクラブの舵取りを任された山谷拓志社長は言い切った。
「来シーズンの開幕のときには2倍も3倍も強くなって戻ってきます。そして、数年のうちにはリーグワンのタイトルを獲得することをお約束します。」
それが根拠のない法螺ではないことは、開幕からの4カ月間で劇的に進化したブルーレヴズの戦いを目撃した人なら分かってくれるはず。
最初のシーズンは終わった。
だが「静岡から世界を魅了する、日本一のプロフェッショナルラグビークラブをつくる」道のりは、まだ始まったばかり。
レヴニスタの皆さんはじめ、ブルーレヴズを支えてくれる全ての人々に感謝を伝えると共に、これからもずっと一緒に歩んでいきたい。