NEWSニュース
【マッチレポート】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第8節
NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第8節
3月5日(土)、リーグワンはちょうど折り返しの第8節を迎えた。
開幕から3節はコロナ陽性者が出たことで不戦敗に終わった静岡ブルーレヴズは、7節を終えて2勝5敗、勝点9の11位。もっとも3つの不戦敗を除けば2勝2敗の五分だ。前節のNECグリーンロケッツ東葛戦に勝って連敗を止めたブルーレヴズにとっては、関東遠征ビジター3連戦の第2ラウンド。連勝を狙いたいところだが、待ち受けるのは分厚い壁。今節の相手はクボタスピアーズ船橋・東京ベイ。前節でリーグワンD1の首位に躍り出たリーグワンの強豪チームだ。
それだけではない。トップリーグのラストシーズンとなった昨季、ヤマハ発動機ジュビロが最後のゲームを戦った相手がこの東京ベイだった。昨年の4月24日、会場はこの日と同じ「江戸陸」こと東京ベイの本拠地・江戸川区陸上競技場だった。ヤマハ発動機ジュビロのチーム名で臨んだ最後のシーズンにピリオドを打たれた相手への、2年越しのリベンジマッチ。燃えない理由はない。
この一戦に、ブルーレヴズは今季初先発の選手が3人というフレッシュな布陣で臨んだ。HOには昨年のアキレス腱断裂から復活した日野剛志選手、FLには東芝(現・東芝ブレイブルーパス東京)~コカ・コーラを経て新加入したマルジーン・イラウア選手、そしてWTB 11には加入3年目で初先発となる中井健人選手が入った。さらにSOには、ここまで主にFBでプレーしていたサム・グリーン選手が入り、CTB 13には前節はリザーブだった鹿尾貫太選手が先発メンバーに戻った。さらに舟橋諒将選手がFLからLOへ、クワッガ・スミス選手がNO8からFL 7へ、イシ・ナイサラニ選手がFL 6からNO8へとポジション変更もあり、前節と同じ背番号でピッチに立ったのは半数に満たない7人。前節連敗を止めたブルーレヴズは、難敵との戦いを前に、安住ではなく自ら変化を求めたのだ。
試合前の選手入場。先頭でピッチに入ってきたのはブルーレヴズのHO 日野選手だった。この試合がヤマハ発動機ジュビロ時代から公式戦通算100試合目の出場。青いジャージのレジェンド中のレジェンドの系譜に名を連ねた小柄な英雄を「江戸陸」に集まったオレンジアーミーことスピアーズのサポーターは温かい拍手で迎えてくれた。
しかし、試合は東京ベイのペースで始まった。
キックオフからペースを掴んだのはホームの東京ベイだった。走力のあるBKと大型でパワフルなFWの圧力を前面に出し、ブルーレヴズ陣に攻め込む。ブルーレヴズもディフェンスで粘り、タックルで相手のハンドリングエラーを誘うが、なかなか自陣を脱出できず、6分に相手BKにディフェンスの隙間を突かれ、初トライを献上。16分にはPR 西村颯平選手が負傷退場するアクシデントにも見舞われ、17分、21分と3連続トライを奪われ、最初のクオーターを終えたところで、ブルーレヴズは早くも19点のビハインドを負ってしまった。
だが青いジャージはひるまなかった。次のキックオフから全員一斉に相手にプレッシャーをかけボールを奪うと、NO8 ナイサラニ選手、FL スミス選手、PR 河田和大選手、LO 大戸裕矢選手らが相手DFに向かって次々と楔を打ち込み、アタック。そして27分、相手陣22m線付近右中間でスクラムを得ると、ブルーレヴズはナイサラニ選手が右にアタック。さらにLO 舟橋選手が力強くゴール前へキャリー。パワフルFWを誇るスピアーズに対し、ブルーレヴズもあえてFWがタテ勝負を挑む。相手DFが集まる。そこで一転、ブルーレヴズはワイドに展開。SH 田上稔選手のパスは交代出場していたPR 郭玟慶選手に渡り、郭選手はみごとなスキルで素早く外の12番 ヴィリアミ・タヒトゥア選手にパス。さらにボールは外へ走り込んだSO グリーン選手へとリズミカルに渡り、ラストパスが初先発のWTB 中井選手へ。背番号11はボールを受けるとまっしぐらにトライラインに滑り込んだ。
中井選手は前身のヤマハ発動機ジュビロに加入して3年目。昨季からトップリーグの公式戦には出場し、トライも挙げていたが、すべて途中出場でのもの。この日はシニアの公式戦で初めてのスタメン出場だった。
「今はラグビーができる環境に感謝して、ラグビーを楽しむことを意識してプレーしました。今日は試合に集中していいプレーができたと思います」
そしてこのトライは、スコアボード上の5点、7点に留まらない意味を持っていた。ブルーレヴズは明らかに、このトライで蘇った。
前半はもう1トライを失い、7-27の折り返しとなったが、ブルーレヴズは自信を取り戻していた。ハーフタイムに堀川隆延監督はこう指示したという。
「ラインアウトからのデリバリーで、相手のHOのマルコム・マークス選手にプレッシャーを受けていたから、デリバリーに変化をつけよう。ボールの動かし方を、自分たちのストラクチャーで作っていこう」
そして後半、ブルーのジャージはケレン味なくチャレンジした。
43分、相手ゴール前に攻め込み、相手のタッチキックをLO 大戸キャプテンがチャージ。
47分、自陣ゴール前に攻め込まれたスクラムを押し返し、ペナルティを奪う。
49分、相手のタッチキックを自陣ゴール前で跳び上がってフィールドに戻した中井選手がまっすぐ蹴り返し、逆に相手ゴール前で弾んでタッチへ出る。試験的新ルールの50/22が適用され、相手ゴール前のラインアウトを得ると、ラインアウト後の攻防で相手にペナルティが続きイエローカード。数的優位を得たブルーレヴズは55分、ラインアウトからフェイズを重ねてSO グリーン選手がトライラインを攻略した。FB 奥村選手のコンバージョンも決まり、14-27の13点差。
58分、東京ベイにもう1PGを許すが、ブルーレヴズの反撃マインドは止まらない。
61分、キックオフを捕った相手BKにWTB 中井選手が思い切りタックル。敵陣ステイに成功すると、ラインアウトからのアタックで再びPKを獲得。グリーン選手のタッチキックでゴール前ラインアウトに持ち込むと、ラインアウトモールからHO 日野選手がサイドに持ち出し、相手ディフェンスが出てくる隙間を突いて左中間に突き刺さった。19-30。
さらに65分だ。
途中出場のWTB マロ・ツイタマ選手が自陣から仕掛けたカウンターアタックは相手DFに捕まり、モールのアンプレアブルで相手ボールのスクラムになるが、ここで青いジャージに刻まれたDNAが蘇る。交代出場の岡本慎太郎選手、郭選手の両PRを先頭に相手ボールのスクラムを押し込み、コラプシングの反則を勝ち取る。すかさずPKで相手ゴール前のラインアウトに持ち込むと、青いジャージの8人が結束。モールを一気に押し込み、日野選手が連続トライを決めた。24-30。ついにワンチャンスで逆転できる6点差に迫り、残り10分。ピッチにはルーキーながらリーダーの風格を漂わせる庄司拓馬選手、ベテランSH 矢富勇毅選手が投入される。総力戦だ。
ひとつのパス、ひとつのコンタクトに熱がこもる。相手アタックをグリーン選手、タヒトゥア選手のダブルタックルで捕まえると庄司選手、郭選手、スミス選手がすかさず集まって相手のダウンボールを阻止し、マイボールスクラムを獲得する。スクラムでフリーキックの反則を取られ、相手がアタックに出れば庄司選手がジャッカルでボールを奪い返す。相手のカウンターアタックを矢富選手がタックルで押し出す。相手アタックをタックルで止めたスミス選手がジャッカルでボールを奪い返す。ベンチからはLO 三浦駿平選手、HO 平川隼也選手のリザーブ陣もピッチに送り込まれる。すべてを出し切る戦いだ。
そして77分。
ハーフウェーの相手ボールラインアウトから始まった最後の攻防。スピアーズは冷徹なまでに勝利を掴みに来た。モールでブルーレヴズ陣に押し込むと、徹底してボールをキープ。ブルーレヴズが必死のディフェンスでボールを取り返そうとするが、逃げ切りに徹した相手が複数で囲み、守るボールを奪い取ることはできなかった。16フェイズ、3分にわたった攻防の末にタイムアップのホーンが鳴る。スピアーズが守り続けたボールを蹴り出す。ノーサイドの笛が響く――。
江戸川区陸上競技場のファンは、両チームへ等しく温かい拍手を贈った。両チームの選手たちは歩み寄り、肩をたたき、互いの健闘をたたえ合った。すべてを出し合って戦った者同士の尊敬と友情がそこにはあった。
「この戦いを誇りに思います。課題はあるけれど、チームとして成長できた」と堀川監督は言った。
「もっともっと成長していかなきゃいけない。6点差で勝ちきれなかったところに伸びしろがあると思う」と大戸主将は言った。
勝ちきれなかったことは事実だ。だが、リーグワンの首位を走る相手に対し、互角の戦いを演じたことも間違いない。遠い先のポテンシャルではなく、目の前の戦いで発揮できる力として、ブルーレヴズにはそれだけのものがある。この日の80分間の戦いは、それを証明した。
ここから必要なのは、それを結果としての勝利に結びつけること。そのために必要なのは、ここからさらに成長していくこと。
次戦は13日。関東遠征3連戦の勝ち越しをかけて、そして上位進出をかけて、江東区夢の島競技場で、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス浦安東京ベイと対戦する。
ブルーレヴズのチャレンジは、ここからが佳境だ。