NEWSニュース
【マッチレポート】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022 第4節
知久屋-ALL NATURAL- presents ファミリーDAY
待ちに待った開幕戦だ。
リーグワン発足にあわせて誕生した我らが静岡ブルーレヴズの初めての公式戦。コロナによる開催中止が3試合も続いたが、それだけにスタジアムには試合をできる喜びが溢れていた。この日の磐田は雲が多く、肌寒かったが、スタジアムに集まったレヴニスタの味方はこの日、無料で配布されたレヴズブルーのフリースポンチョ。見るからに暖かそうだった。コロナ感染第6波が押し寄せる中、入場者は2,745人と決して多くはなかったが、ヤマハスタジアムのシンボル、そそりたつバックスタンドがレヴズブルーに染まった様子は鮮やかだった。
記念すべきブルーレヴズ初戦の対戦相手となったレッドハリケーンズ大阪は、レヴズと同様に選手にコロナ陽性者が出たことで前節は不戦敗。お互いに辛い状況をくぐり抜けて試合を迎えた。レッドハリケーンズの入場時も、ヤマスタのファンは大きな拍手で迎えてくれた。心温まる光景だった。
そしていよいよレヴズの入場。そのときスタジアムに爆音が響いた。爆音の主はレヴズカラーのモトGPチャンピオンマシン、YZR-M1、チャンピオンライダーの岡本選手と前田選手だった。スモークが吹き上がり、エグゾーストノートの轟く中を、真新しいブルーのジャージに身を包んだレヴズ戦士たちが入場する。関西社会人リーグを戦ったヤマハ発動機ラグビー部からトップリーグを戦ったヤマハ発動機ジュビロ、そしてリーグワンを戦う静岡ブルーレヴズ。その歴史を貫くチャレンジスピリットは、ここ磐田を出発点として世界に挑戦したヤマハレーシングとも、そしてこのスタジアムから世界に挑んだサッカーのジュビロ磐田とも重なる。そう実感する瞬間だった。
先頭を切って入場したのは主将の大戸裕矢選手。この記念の試合が、ヤマハ時代から通じてちょうど公式戦100キャップという節目の試合だった。大戸選手らしい、ちょっとはにかんだような笑顔を浮かべての入場、こういう巡り合わせにも、何か運命を感じる。
そして、試合前には大切な時間。火山の噴火と津波で大きな被害を受けたトンガのみなさんへ黙祷を捧げた。試合前の会場入口では募金も行われた。レヴズそしてジュビロにとってもトンガは大切な国だ。今のレヴズでトンガゆかりの選手はトンガ代表9キャップを持つCTBタヒトゥア選手。昨季までのジュビロ時代にはヘルウヴェ選手、シアレ・ピウタウ選手などトンガ生まれやトンガにルーツを持つ選手がたくさん活躍してくれたし、日本のラグビーはトンガの仲間と一緒につくってきたもの。レヴズはジュビロ時代から、東日本大震災で被害を受けた釜石にもいち早く遠征して以来、毎年交流を続けている。防災意識を高めるためにも、これからも被災地の応援にとどまらない交流が続いていくだろう。
さあキックオフ。
レッドハリケーンズのキックオフをSO清原選手が蹴り返し、レッドハリケーンズがカウンターからレヴズ陣を目指して攻め立てる。レヴズは体の芯を当てるタックルで対抗する。ゲームから遠ざかっていたレヴズにとって、ディフェンスで試合を始められたのは幸運だった。タックル、タックル、体を当てて当てて、8フェイズまで止め続けたところでレッドハリケーンズはキックするがこれがダイレクトタッチ。レヴズに敵陣ラインアウトのチャンスが来た。ディフェンスで体も暖まり、アタックだ。
左端でボールを持ったWTB、トップリーグトライ王のツイタマ選手がキックを蹴って自らチェイス。これがドロップアウトになり、相手が深くキックを蹴ると、今度は新加入のオーストラリア代表FLナイサラニ選手がカウンターアタック。さらに右を新加入のWTBファリア選手が突く。スリリングなアタック。そして歓喜の瞬間は5分だ。WTBツイタマ選手、HO平川選手、LO桑野選手が次々とゴールラインに迫ると、SH矢富選手のフラットで長いパスを受けたSO清原選手が鋭いステップで相手タックラーをかわし、ボールをワシ掴みにした右腕を伸ばしてゴールポスト右にたたきつける。ブルーレヴズにとって記念すべきリーグワン初トライを決めたのは背番号10、28歳になったファンタジスタ清原選手だった。
さらに13分、レヴズはまたゴール前に攻め込み、スクラムを得ると矢富選手から清原選手-ツイタマ選手とパスが渡りトライ。36歳のベテラン(2月で37歳)、今シーズンからプレーイングアドバイザーも務めるSH矢富選手の速くて長いパスが効いている。
しかしレッドハリケーンズも負けてはいない。ロングキックでレヴズ陣に攻め込むと、強いランナーにボールを集めて攻めてくる。前半15分過ぎからハーフタイムまではレッドハリケーンズの時間だった。レヴズはPR伊藤選手がケガで退場し、リズムを取り戻すのにやや時間がかかった。だが、ディフェンスに回ってもNo8クワッガ・スミス選手が再三ジャッカルをみせるなど、レヴズらしさはしっかり見せてくれた。このディフェンスの粘りはきっと流れを変える。前半終了直前、レッドハリケーンズはSOロンバート選手が逆転のPGを狙うがこれを失敗。前半は14-13。レヴズが1点をリードして折り返した。
そして、陣地を入れ替えた後半。
いきなり魅せたのは交代で入った32歳のベテランHO日野選手だ。昨年の開幕戦で右足のアキレス腱を切り、シーズンを棒に振って以来の復活を果たした日野選手は、キックオフのボールのこぼれ球に鋭く反応してボールを確保する。地味でひたむきで勇気あるプレー。これがチームに火がつかないわけがない。
1分、FB奥村選手が狙ったPGは外れたが、これは前半最後のレッドハリケーンズのPG失敗があったからおあいこ。ミスなど気にしてはいられない。4分、今度は右ゴール前のラインアウトからモールを組んで相手ゴールに迫る。このモールは最後に崩れてしまったが、レヴスのアタックマインドは全然落ちない。9分、右ラインアウトからタヒトゥア選手、ファリア選手が縦に突破を繰り返すと、一転、清原選手が逆サイドのツイタマ選手へキックパス。ちょっと深いかと思われたが、ここでツイタマ選手のスピードが爆発。豪脚を飛ばし、インゴール地面スレスレに滑りこんでボールを掴むとすぐに起き上がり、ゴールポスト左まで回り込んでトライ。21-13とすると、15分にはFB奥村選手がPGを決めて24-13、11点差まで点差を広げる。
こうなるとほしいのはボーナスポイントだ。トップリーグ時代と同じく、リーグワンも勝点は勝ちが4、引き分けが2。負けは0。しかしトライ数で相手に3差をつけるとボーナスポイント「1」が入る。これを積み重ねていくことが、最後の順位争い、プレーオフ進出争いに効いてくる。この時点でトライ数は3対1。レヴズはもう1トライを取らないといけない。
24分。レヴズは右ゴール前ラインアウトのチャンス。レヴズはしっかりボールを確保してモールを押すが最後に崩れ、TMO(テレビマッチオフィシャル=ビデオ判定)の末にトライは認められず。28分。再びゴール前ラインアウトからモールを押す。しかしレッドハリケーンズのディフェンスも厳しく、ゴールラインを守り切る。時計がじわじわと進む。
だがこの日のレヴズは、試合から遠ざかっていたにもかかわらず最後まで足が止まらなかった。試合をできる喜びが、選手たちを最後まで走らせたのかもしれない。後半37分、敵陣で得たスクラムからの連続攻撃。SO清原選手がHO日野選手とのループプレーでパスを受け、右サイドで待つナイサラニ選手へ糸を引いたようなロングパス。ナイサラニ選手はブルドーザーのような迫力で相手タックラーを突き抜けて右中間にトライ。29-13とリードを広げるとともに、これでトライ数3差。待望のボーナスポイント圏突入だ。
そして次のキックオフからボールをつないでいる間に、場内にはタイムアップのホーンが響く。しかしレヴズは攻撃をやめず、ボールを繋いで攻め続ける。 そして41分、またも清原選手のロングパスから、今度はWTBで途中出場した石塚選手がトライを決める。ボーナスポイントを決めてもなお走り続け、攻め続け、トライを取りきったレヴズのフィフティーンに、スタンドから大きな大きな拍手が贈られた。
ファイナルスコアは36-13。
「今日は我々のホームゲーム。何としても勝たないといけない、何としても勝点5を取らないといけない。選手たちは80分攻め続けるマインドを持ち続けて、最後にトライを取って終わった。選手たちのことを誇りに思います」と堀川監督は胸を張った。
「ノンメンバーがいい練習をして、この試合に向けた僕らメンバーの準備を手伝ってくれた。そのみんなのために戦おうと言って臨んで、勝点5を取れて良かった」と大戸主将は柔らかく笑った。いい笑顔だった。
この日の観衆は2,745人。正直言えば少しさみしい。だがコロナ下の現状を考えればやむを得ない数字だろう。いまレヴズにできることは、来てくれたレヴニスタのみなさんに『来て良かったね』『また来たいね』『今度は友達を誘ってこようかな』と思って帰ってもらうこと。そして、テレビや新聞やネットで試合結果や雰囲気を知った人が『行けばよかったな』『次は行ってみたいな』と思ってもらえる、月曜日の学校や職場で、『昨日のレヴズの試合、楽しかったね』と話題のひとつになるような、そんな試合を続けること。
この日の試合は、そう思ってもらえる試合だったんじゃないかと思う。そしてこれからも、もっと多くの皆さんにそう思ってもらえるように、レヴズ戦士たちはハードワークしてくれるだろう。
今日は、静岡ブルーレヴズにとってのリーグワン初勝利を心から喜びたい。